名古屋地方裁判所 昭和62年(ワ)518号 判決 1992年10月21日
主文
一 原告の被告に対する請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
理由
第一 請求
被告らは、原告に対し、各自金一億〇一七〇万三八五四円及びこれに対する昭和五八年四月二八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
原告は、ユニオン貿易株式会社(以下ユニオン貿易という)及び同社が解散後大同物産株式会社(以下大同物産という)との間で、海外商品取引所における砂糖の売買取引を委託し、証拠金として金銭及び有価証券を預託した。
本件は、右商品取引委託は、ユニオン貿易、大同物産の関係者である被告らが証拠金として預託された金銭及び有価証券を手数料や損金名目で領得しようとしてなした詐欺的商法であるとして、原告が不法行為による損害賠償を求めた事案である。
原告が、損害として主張するのは、次のとおりである。
1 物的損害 被告らに預託した証拠金相当額から返戻された金員を差し引いた八一七〇万三八五四円
2精神的損害 本件取引に引きずり込まれ、相互の生活資金を奪われ、人間不信、自責の念、夫など周囲への配慮に苦悶し、弁護士への相談、法的手段を余儀なくされたことに対する慰謝料として一〇〇〇万円
3 弁護士費用 一〇〇〇万円
(当事者間に争いのない事実等)
1 原告は、ユニオン貿易との間で、昭和五七年九月一〇日、香港商品取引所における砂糖の売買取引、昭和五八年一月二六日ころ、ニューヨーク・コーヒー砂糖ココア取引所における砂糖の売買取引を委託し、別紙証拠金一覧表のとおり金銭及び有価証券を預託した。
原告について、ユニオン貿易との間で、別紙取引一覧表取引番号香港1ないし5、NY1ないし15の取引が行われ、ユニオン貿易が解散後、原告との取引を引き継いだ大同物産との間で別紙取引一覧表取引番号NY16、17の取引きが行われた結果、証拠金の内金八一七〇万三八五四円が同表のとおり手数料及び損金に充当されたとされ、最終的に金一三〇万〇〇三五円が返還された。
2 被告ら
ア ユニオン貿易
ユニオン貿易は、昭和五五年一〇月、海外商品取引の受託を目的として石川幸雄、被告乙山春夫、被告南川が設立したものであり、本店は大阪市にあり、昭和五六年一一月には名古屋支店を開設したものの、昭和五九年三月には同支店を閉鎖している。
ユニオン貿易は、昭和六〇年六月二〇日株主総会の決議により解散した。
イ 大同物産
大同物産は、海外商品取引の受託を目的として被告乙山春夫が中心となり被告南川が参画して昭和六〇年四月に設立された会社であり、ユニオン貿易の顧客との取引を引き継いだが、昭和六一年六月末ころには店舗を閉鎖し事実上事業を停止している。
ウ 被告乙山春夫
被告乙山春夫は、吉原商店や大都通商で国内商品取引の業務に従事していた者であり、ユニオン貿易の設立のため大都通商を退職したものである。
ユニオン貿易では常務取締役、本店長として営業面での最高責任者の地位にあり、昭和五八年四月ころからは名古屋支店長を兼務し、昭和六〇年七月からは石川幸雄と共同代表取締役となり、大同物産設立後は代表取締役の地位にあつた。
被告乙山春夫は、昭和五八年一月一〇日以降の原告との取引を担当した。
被告乙山春夫は原告との取引を担当したのは同年四月以降であると供述するが、原告及び被告宮地の供述によると同年一月一〇日以降であると認められる。
エ 被告乙山秋子
被告乙山秋子は、被告乙山春夫の妻(昭和六一年ころ離婚)であり、昭和五九年七月六日から昭和六〇年六月二〇日までユニオン貿易の監査役となつていたが、会社組織とするための員数合せに過ぎず、監査業務に関与したり報酬を受けたりはしていなかつた。
オ 被告南川三郎
被告南川は、大都通商で国内商品取引の業務に従事していた者であり、ユニオン貿易の設立のため大都通商を退職したものである。
ユニオン貿易では注文の取次、証拠金の送金等の内勤事務の責任者を勤め、大同物産設立後は同社の取締役に就任し、同様の業務を担当していた。
カ 被告薮内正彦
被告薮内は、大都通商に勤務していたものであり、同社に在職中に知合つた被告乙山春夫、同南川の誘いで昭和五六年一一月ユニオン貿易に入社し、名古屋支店長の地位に就いたが、昭和五八年三月ころ、被告宮地、被告田村と共に退社し、商品取引の受託を目的とする東洋貿易を設立している。
キ 被告宮地善明
被告宮地は、大都通商に勤務していたものであり、同社に在職中の上司であつた被告薮内に誘われ、昭和五七年一月ころユニオン貿易に入社し、名古屋支店営業次長として、同支店の営業を統括していた。
被告宮地は、昭和五八年三月ころ、被告薮内、被告田村と共に退社し、商品取引の受託を目的とする東洋貿易を設立している。
被告宮地は、在職中の昭和五七年一二月まで、原告との取引を担当した。
ク 被告田村喜代志
被告田村は、大都通商に営業担当者として勤務していたものであり、同社に在職中の上司であつた被告薮内に誘われ、昭和五七年一月ころユニオン貿易に入社し、名古屋支店で営業を担当していた。
被告田村は、昭和五八年三月ころ、被告薮内、被告宮地と共に退社し、商品取引の受託を目的とする東洋貿易を設立している。
被告田村は、最初に原告を訪問し勧誘した者であり、在職中の昭和五七年一二月まで、被告宮地と共に原告との取引を担当した。
ケ 石川幸雄
石川幸雄は、以前吉原商店に勤務したことがあり、被告乙山春夫と知り合いであつた縁で、ユニオン貿易を設立したが、設立にあたつては、その資金のほとんどを出し、代表取締役に就任した。
昭和五八年七月被告乙山春夫が共同代表となつた後は、会長と呼ばれ、営業会議にも出席しなくなり、昭和五九年六月に代表取締役を辞任している。
石川及び同人の妻石川智子は、当初共同被告であつたが、原告との間で金一七〇〇万円を支払つて示談し、訴訟の取り下げを受けた。
第三 争点
争点1 詐欺的商法か否か
(原告の主張)
ユニオン貿易、大同物産との取引は正常な商品取引委託契約ではなく、「客殺しの詐欺的取引」である。
すなわち、「客殺しの詐欺的取引」とは、客から商品取引委託証拠金として預託を受けた金銭及び有価証券を、売買手数料もしくは損金として、最終的に受託を受けた者が取得してしまうことを目的とした取引であり、
ア 商品取引所に注文を通さないノミ取引もしくは受託者が客の注文に対して反対の玉を建てる向い玉等によつて、預託された証拠金が他の取引員の手に渡らないように確保した上、
イ 客にとつて有利な場合には仕切拒否をして証拠金がなくなるまで取引を継続させ、一任売買、無意味な反復売買、両建等の手段を駆使して、売買手数料もしくは損金(向い玉を建てている受託者にとつては益金となる)として証拠金を取り上げるものであり、
ウ このような目的を達するため、取引の経験と知識の乏しい者に対し、投機性の説明をせず利益のみを強調するなどの強引な勧誘がなされ、
エ 新たな客を次々と開拓する必要から、新規契約の件数や契約枚数に従つて給料が支払われる仕組みになつている。
本件が詐欺的商法であることは、次の事実から明らかである。
一 ユニオン貿易、大同物産の取引所との関係
ユニオン貿易、大同物産は、香港取引所に関してはエース・アジアン、ニューヨーク・コーヒー砂糖ココア取引所についてはクレスト・インターナショナルを仲介業者として顧客からの注文を取引所に取り次いでいたと言う。
しかしながら、被告乙山春夫の証言及び証拠保全の結果によれば、ユニオン貿易、大同物産では、客の注文に対し反対の自己玉を建て、もしくは、客の注文の差相当分について自己玉を建てており、ほとんどの場合売買同数を取り次いでおり、会社としては手数料は別として、証拠金を取引所に送金することはなく、清算をすることもなかつた。
このように、ユニオン貿易、大同物産においては、顧客の差益は会社の差損、顧客の差損は会社の差益という利害が相反する関係にあつた。
被告乙山秋子を除く被告らが以前勤務していた大都通商においても、事情はほとんど同様で、多量の自己玉を建てて顧客と向いあつていた関係にあり、大都通商に勤務していた同被告らはユニオン貿易と取引所も同様の関係であることを知つていた。
二 給与体系
ユニオン貿易、大同物産では、従業員に対する給与は、固定給の他、新規賞、新規件数賞、新規枚数賞、増証賞、課別差引向上賞という歩合給が支給されることになつており、昇格昇給も新規件数、新規証拠金額によるとされていた。
このため、従業員としては、多くの給与を得るためには、新規の顧客の獲得と多額の証拠金の預託、預託金の追加を得ることに奔走せざるをえないシステムになつていた。責任者にとつては、客からより多額の証拠金の預託を受けていることが歩合給の分配を受けられることに繋がる関係にあつたから証拠金の獲得とその維持が利益であつた。
三 社会的相当性を逸脱した勧誘行為
原告は昭和五七年三月に教員を退職し退職金によつて生計を維持していた家事従事者であり、先物取引の存在については全く知らなかつた。被告田村と同宮地は、勧誘に当たり、証拠金と総約定値段との関係、追証拠金の必要性、限月内での転売、買戻し、手数料負担の大きさ、為替変動による危険、情報不足による危険、現実に損になる比率の高さなどの重要事項を告知せず、投機性の説明をしなかつた。逆に、今取引を開始すれば利益を生ずることが確実であると誤解させる断定的判断を提供して原告を勧誘した。
四 虚言、甘言、威迫困惑による委託証拠金の取得
被告らは、原告に返還しない意図であるにもかかわらず、虚言、甘言、威迫困惑によつて、原告から委託証拠金名下に金員、有価証券を詐取した。
すなわち、被告田村、被告宮地は、
1 昭和五七年九月一〇日ころ、「このタイミングをのがすなんてもつたいない。今売れば明日にも利がのるから。」と利益を生ずることが確実であると誤解させるような断定的判断を提供して、四八〇万円を提供させ、
2 同年九月二〇日ころ、「約束どおり短期間で五四万一一六六円の利益が出ました。今後も慎重に運用しますから、現金がなければ有価証券でもいいですよ。枚数を増やせばぐんと利が大きくなります。もちろん配当金は今までどおり入るし、証券を返却してほしいときはいつでもお返しします。一挙両得ですよ。」などと、虚言、甘言を弄して、一四万四五〇〇円の現金と約三〇〇〇万円相当の有価証券を提供させ、
3 同年九月二四日ころ、「利益金と現金を足せば同じパターンでもつと儲けができますよ。」と、虚言、甘言を弄して、一八五万円を提供させ、
4 同年一〇月八日ころ、「九月二四日の買いが予想に反して値下がりし追証ラインに達してしまつた。すぐ追証を入れるかナンピンもしくは両建しないと損金がふくらんでどうにもならなくなる。」、「今も刻々と値下がりが続けばあなたはピンチですよ。売りを建てて、一応損を食い止めればこの相場が持ち直せばなんとかなりますから。」と威迫困惑させて、現金二四〇〇万円と国債八五〇万円を提供させた。
また、被告乙山春夫は、昭和五八年四月二一日ころ、「前の売りは下がると思つて建てたが、値が上がつて行くのでこのままではどうしようもない。損がますます大きくなるので、この内三二枚を仕切つて五〇枚を残し安全策として代りにすぐ買い五〇枚を建てれば両建てとなり、今後どのような値動きがあつても安心である。」などと、威迫困惑させ、虚言、甘言を弄して約一三二一万円を提供させた。
五 原告の意思に反した取引
1 売買指示の期関制限違反
本件取引は、言葉巧みに原告をユニオン貿易の名古屋支店に同行して開始されたものであるが、これは海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律八条一項にいわゆるクーリングオフ条項が定められた法意に照すと、委託者の保護に欠けるものであり、原告の自主的な意思を反映させない取引である。
2 新規委託者に対する過大な取引の勧誘
国内の公設の商品取引においては、新規委託者に対しては、三か月間の保護育成期間を定めて、この間に商品取引の仕組みを熟知させることに努め、原則としてその間の建玉は二〇枚を超えてはならないとされている。
これに照すと、海外先物取引においても、三か月以内に二〇枚、証拠金にして一二〇万円を超える取引がなされた場合は、新規委託者の保護に欠け、その意思を反映させない取引を行わしめたというべきである。
原告の場合は、最初の取引が八枚(国内の八〇枚に相当する)であつた上、取引の開始から二八日目には一〇四枚(前同一〇四〇枚相当)もの巨額な取引を行わされている。そして、そのような取引をしたことについて合理的理由はない。
3 一任売買
原告は、株式の売買や商品先物取引の経験はなく、先物取引の危険性について無知であつた。売りから始まるということの意味や証拠金と買い付けた砂糖の総約定代金との関係、追証拠金制度、限月等の専門用語等先物取引の仕組みについて無理解であり、取引商品である砂糖の価格変動要員も知らなかつた。
素人がリスクを承知で自己の判断で取引をする場合には、ア 投下可能資金の何分の一かの少ない枚数で取引をする、イ 利益が出ても証拠金に組入れたりしない、ウ 自信が持てない間は取引を休む、エ 売り直し、買い直し、両建て等手数料を損するばかりの取引は絶対にしない、オ 一度に大量の取引はしないと言われている。
しかるに、原告は、ア 取引開始後1か月以内に自己の保有する流動資金の大半である約七〇〇〇万円相当額を注ぎ込み、イ 二回目の取引で出た三〇〇万円余りを次の取引の証拠金に組入れ、ウ 取引を休むことはなかつた、エ 売り直し、買い直し、両建てを繰り返しており、オ 一度に四三枚とか五二枚とか常軌を逸するような巨大な取引をしている。
このことからすると、本件取引は被告らが意のままに原告を操り、事実上売買を一任させたものと断ぜざるをえない。
普通、先物取引の被害者は買いから取引を始めているところ、原告は売りから入つているが、被告田村の買いの勧めと被告宮地の売りの勧めの矛盾について原告が質問し説明を求めた形跡もなく、売建てをすることの意味を理解した形跡もないから、原告は売りも買いも含めて事実上右被告らに売買を一任したものというべきである。
また、取引全体を通じて、原告から注文を積極的に出したことはなく、担当者の勧めに従つており、違う注文を出した事はない、昭和五八年夏ころからは指し値注文をしたこともあるが、無視されたり好き勝手にされたことがある。
以上の次第で、本件取引は、原告の判断と責任でなされたものではなく実質的に一任売買であつた。
4 原告を意図的に損させる取引
本件においては、差引損金七九七一万七八四〇円に対し手数料が五九三〇万円と七四パーセントにも上つており、手数料稼ぎの無意味な反復売買コロガシ、両建が行われていた。
具体的には、取引番号香港3は同2の買い直しであり、同4は同3の両建であり、同5は同4を仕切ると同時に建てられた途転である。また、ニューヨークの取引番号NY2の取引は同1の、同3は同2、同12は同11のそれぞれ両建であり、同7、8は同5、6を仕切ると同時に建てられた途転であり、同15は同14を仕切ると同時に建てられた途転である。
しかも、預託された証拠金一杯の取引が休むことなく続けられている。
(被告らの認否)
原告主張事実は、すべて争う。
争点2 時効など
(被告田村の主張1 時効)
被告田村が原告の取引を担当したのは昭和五七年一二月までであり、仮に同被告の行為が不法行為になるとしても、
1 被告田村が担当した取引が損切りされた昭和五八年一月二六日に原告は損害を知つた。
2 仮に、右時点で損害を生じたことを知らなかつたとしても、被告田村は退社の際に、原告に「大変損を出して申し訳ない。」と挨拶しているので、その時点で損害の発生を知つた。
3 仮に、退社後の損害についても被告田村に責任があるとしても、原告は昭和五八年八月二六日にそれ以前の取引による損害をすべて取り戻しており、そのころは既に被告田村らの不当な勧誘からの影響を脱しており、その後の取引は原告が自己の相場判断に基づいてなしたもので、被告田村の行為と相当因果関係がない。よつて、右以前の行為について被告田村に責任があるとしてもそれまでの取引で最後に損金が生じたのは同年六月三〇日であり、そのころ原告は損害を知つた。
以上のいずれの時よりも三年以上経過しており、不法行為による請求権は時効によつて消滅した。よつて、被告田村は右時効を援用する。
(被告田村の主張2 免除)
原告は、石川幸雄、智子との間で示談金を支払い、その余の請求権を放棄している。
石川幸雄はユニオン貿易のオーナーであり、被告田村らを手足として使用してあがつて事業の利益は同人に帰属していたから、内部関係においては石川幸雄が全責任を取るべき立場にあり、経営に全く関与していない被告田村には負担部分はない。
原告は、石川幸雄と被告田村の関係を知りながら、一七〇〇万円という訴求金額より著しく低い額で示談をし、その余の支払いにつき免除した。
もし被告田村について免除の効果を認めないと、経営者だけが免責を受け、従業員だけが責任を追求され不公平である。
よつて、被告田村に対する請求についても免除されたと解すべきである。
(被告田村の主張3 過失相殺)
仮に被告田村になんらかの責任があるとしても、原告は投機性を認識しつつ本件取引をしたものであるから重大な過失があり、一方被告田村は上司である被告宮地の手伝いとして取引の勧誘に従事したにすぎないから、被告田村は過失相殺により免責される。
(被告宮地の主張 時効)
被告田村の主張1の1記載の時効の主張と同旨。
(被告薮内の主張 時効)
被告田村の主張1の3記載の時効の主張と同旨。
(被告宮地、同薮内の主張 弁済)
被告宮地、同薮内になんらかの責任があるとしても、在職中の香港砂糖の取引による損失に限られるところ、石川幸雄の支払い額をまずこれに充当すべきである。
(被告乙山春夫、同南川の主張 免除)
被告乙山春夫、同南川になんらかの責任があるとしても、石川幸雄が支払つた一七〇〇万円を超えるものではない。
仮に、これを超えるとしても、被告田村の主張2と同様に免除された。
(原告の反論)
1 時効の主張について
原告は被告らの共謀に基づく一連の不法行為によつて、最終的に損害を被つたものであり、原告は取引の最終時点である昭和六一年二月二八日に不法行為であることを知つた。原告は昭和六二年二月二〇日に本訴を提起しており、時効は完成していない。
2 免除の主張について
被告らの責任は不真正連帯債務であり、弁済したものが債権の放棄をしたとしても、他の債務者に影響を及ぼさない。
3 その他の主張について
争う。
なお、被告田村、同宮地、同薮内は、被告らの責任が担当していた取引による損害に限ると主張するが、詐欺的商法による不法行為は証拠金の取得によつて既遂に達しており、その後の取引による差損益は、詐欺行為の発覚を防止するための隠蔽工作にすぎない。よつて、右被告らは在職当時に預託させた金額について責任がある。また、右被告らが退職した後の分についても、預託された日は退職日と近接してなされており、退職した被告らによつて被つた損を挽回するということで預託されているので、右被告らの行為と相当因果関係のある損害である。右被告らとしては、被告乙山春夫の違法行為を止めさせるか、原告に事情を話して追加預託を止めさせなければ責任を免れる事はできない。
第四 争点についての判断
一 争点1 詐欺的商法か否か
商品取引の売買委託に名を借りた詐欺、いわゆる客殺しの詐欺的商法とは、
1 顧客が取引の証拠金として預託した金銭等を最終的に受託会社が取得することを目的とし、
2 顧客の意思と無関係に、売りまたは買いを建て、これを仕切ることによつて、
3 最終的に顧客に損失を被らせ、預託した金銭の返還をしないことである。
以上三要素の内、詐欺的商法を詐欺的商法たらしめるのは、前記2の客に損を被らせるための手段であり、これなくしては前記1の目的を達成できないばかりではなく、逆にいえば、顧客が真に自由な意思に基づいて取引をなした場合には、結果的に損失を被つたとしても客自身の責任であり、詐欺的商法の結果損失を被つたとはいえない。
先物取引の経験がなくその知識に乏しい客が詐欺的商法のターゲットにされるのは、そのような客でなければ前記2のいわゆる「殺し」の手段がとれないことによる。
ところで、「客殺し」の目的は、通常一度の取引で実現されることはなく、ある取引を前提として次の取引がなされるなど一連の取引を経て実現されるものであつて、個々の取引毎に差損益金の清算支払いはなされず、差益は証拠金に組入れられることが多く、委託関係を終了させたときに残余が返還され、損失が確定する。
このように、詐欺的商法がその目的を達成するまでには一定の期間を要するところ、当初は商品取引について知識がなかつた客であつても、取引を経験することによつて、その知識と自己の判断によつて取引の注文をする能力が養われてくるが、その後に自己の判断で取引を継続したような場合には、もはや詐欺的商法であるとはいえなくなり、仮に、取引の結果損失が生じたとしても、少なくともその後における取引の損得については、顧客の責任であるというべきである。
もつとも、従前の取引の損失を挽回するためにその後の取引を継続したというような事情がある場合など、それ以前の詐欺的商法との間に連続性を認めることができ、その後に拡大した損失も相当因果関係のある損害と認めることができる場合があることはいうまでもない。
以上を前提として、本件取引の経過に基づいて判断するに、《証拠略》によると、次の事実が認められる。
1 取引開始の経緯等
原告は、昭和五七年に小学校の教師を退職した当時五四才の女性であり、退職後は家事に従事していたものであり、本件以前に商品取引をしたようなことはなかつた。
本件取引で預託した株式は原告が教育委員会に勤務している夫と共に、主として原告の夫が取得した財産であるが、投機として株式の売買をしていた形跡はなく、原告は保有財産の価値として手持株の値段に関心はあつたが、自らこれらを利殖のために売り買いするようなことはなかつた。
昭和五七年九月五日ころ、ユニオン貿易の女性従業員から電話で取引の勧誘があり、翌日被告田村が来訪して「先物取引の砂糖が、未だかつてない底値にきています。今買えば必ず儲かるので是非乗つて下さい。」と勧誘を受けたのが、原告がユニオン貿易との関係を持つた最初である。当日は、原告は外出するところであつたので、屋外で話をしただけであつた。
九月八日、被告田村が来訪し、値動きのグラフ、業界紙、パンフレット等の資料を見せながら「この前もいつたように、今砂糖の値は有史以来の安値でもう下がりようがないので絶対に儲かる。」と勧誘した。聞き慣れない専門用語を交えての話で原告は十分理解できなかつたし、会社の存在も疑わしいと思つて、その場では取引を開始するには至らなかつた。
九月一〇日、来訪した被告田村の「一度会社を見るだけでもいいから来て下さい。もちろん無駄足にはさせません。絶対儲けさせますよ。」との巧みな言葉遣いについ誘われ、原告はユニオン貿易に同行した。会社では、被告田村とその上司である被告宮地から説明を受け、被告宮地から「このタイミングを逃すなんてもつたいない。今売れば明日にも利が乗るから。」と勧誘され、売買取引の委託契約を締結し、その場で八枚の売り注文をした。
右注文に際しては、儲かるという話は何度も強調されたが損するという話や損する率がどの程度あるかと言う話はなく、一枚の取引量、総約定代金、証拠金との関係、どういう場合に追証がかかるかという説明もなかつた。原告の認識は投資信託と同じ様なものという程度の理解にとどまつていた。
九月一一日、集金に来た被告田村は、「絶対に損はかけません。近日中に利益金を持つてきますから楽しみにお待ち下さい。」と言つて帰つていつた。
九月二〇日、被告田村と被告宮地が来て「約束どおり短期間で五四万一一六六円の利益が出ました。今後も慎重に運用しますから、現金がなければ有価証券でもいいですよ。枚数を増やせばぐんと利が大きくなります。もちろん配当金は今までとおり入るし、証券を返却してほしいときはいつでもお返しします。一挙両得ですよ。」と新たな取引を勧誘した。原告は、右被告の言葉を信用して短期間のつもりで大部分の株を渡した。その直後、被告宮地が原告宅の電話を使つて四三枚の買い注文を出した。
九月二四日、被告田村が、「九月二〇日の買いが予想どおり値上がりし七・八五になつたので、昨日仕切つた。利益が出たのでこれから持つて行きます。」と電話をしてきた。そして、来訪した被告田村と被告宮地から、「利益金と現金を足せば同じパターンでもつと儲けができますよ。」と二時間近くも勧誘され、被告宮地が原告宅の電話を使つて五二枚の買い注文をした。
一〇月八日、来訪した被告宮地と被告田村から、「九月二四日の買いが予想に反して値下がりし追証ラインに達してしまつた。すぐ追証を入れるかナンピンもしくは両建しないと損金がふくらんでどうにもならなくなる。」などと言われ、予想外の話に原告は唖然とし恐ろしさに口もきけないようになつた。追証とは初めて聞く言葉であり、追証が必要になるなどという説明は一切受けていなかつたので、このことを抗議すると、被告宮地は「追証が必要になることがあるのはこの世界では常識の部類です。とにかく今は議論をしている時ではない。今も刻々と値下がりが続けばあなたはピンチですよ。売りを建てて、一応損を食い止めれば、この相場が持ち直せばなんとかなりますから。」と追い詰め、両建に救いのチャンスがあるかのように説明した。原告はよくわからないまま被告宮地らの言いなりに五二枚の売りを建てて両建てすることになつた。
以上の事実が認められる。
右事実によれば、原告は従前商品取引の経験もなく、被告らの説明によつても十分にその仕組みを理解していなかつたこと、被告田村、同宮地は利益が出ることを強調し、投機性の説明を十分せず、同被告らに任せておけば利益が出ると言い、最初の二回は現に利益を出して原告を信用させたこと、右最初の二回の建て玉の仕切は原告の指示に基づくものではないこと、当初一、二回利益は出すが、その後の建て玉について追証がかかつたとして両建てを勧め、預託金の追加を求めることは詐欺的商法においてよく見られる手口であること、本件取引が原告の自由な意思による判断に基づいてなされたというには問題となる点として以上が指摘できる。
それにもまして、前記のように商品取引の経験のない原告が、取引開始後一か月も経過しない内に投資可能な資産のほとんどを証拠金として預託したこと、また、取引の枚数も四三枚とか五二枚という極めて多くの枚数であり、生ずる可能性のある差損金の額も極めて高額に及ぶところ、このようなことを十分に理解して原告が取引を行つたとは、到底思えない。
原告が、以上の点を捉らえて本件取引が詐欺的商法であると主張するのももつともである。
2 昭和五八年八月二六日より前の経過
その後の取引の経過をみると、昭和五八年一月以降、担当は被告乙山春夫になり、商品もニューヨーク・コーヒー砂糖ココア取引所の砂糖に変つたが、原告の取引勘定は損金が拡大していつた。
すなわち、昭和五八年六月一六日には二三四七万〇六〇八円、六月三〇日には二七六一万二四八〇円という大きな損金が生じ、累計として二六二七万六二五四円の損勘定となつた。
このころには、原告は損金の大きさに驚き、商品取引が非常に危険なものであることを認識し、もう止めようという気持ちになつていたが、被告乙山春夫から損が挽回できると言われるまま、七月二五日に五〇枚、八月二日に四五枚を新たに建てて取引を継続してきた。
なお、被告乙山春夫が担当になつてからは、毎日市況についての報告や取引の勧誘がなされていたが、昭和五八年四月以降に原告が取引をしたのは、四月二一日、六月八日、六月一六日、六月二一日、六月二七日、六月三〇日、七月一八日、七月二五日、八月二日の九回にすぎず、新たな建て玉は七月二五日、八月二日を含めて五回にすぎないのであつて、取引の回数は多くはない。
また、この間、取引番号NY1の取引(以下、取引番号はすべて取引番号NYである。)に対し同2が両建てにされたが、結果的に取引1による差損金は約五〇〇〇万円に上つたのに対し、取引2により約四一〇〇万円の差益金が出て、取引1による損失はそれなりにカバーされた。
いずれにしても、原告は従前の取引による損害を挽回することができるとして、取引を継続してきたものである。
3 昭和五八年八月二六日の取引
昭和五八年八月二六日、被告乙山春夫から「よく下げてきた。スポットも安くなり、このあたりが底値だから売りを処分して利を乗せると同時に、この安値のチャンスを逃さず買いを建てるとよい。」と言われた。原告は、このあたりで止めようと思い、売りだけを処分してほしいと頼んだ。
そして、同日に、当時の建て玉の全てである取引番号5、6を仕切れば、手数料を差し引いても二五〇〇万円余りの差益金が得られ、従前の累計損失を差し引いても八五二万八六五九円の利益となる勘定であつた。
原告は、これでもう止めようと思つたが、被告乙山春夫から、「この安値のタイミングを利用すれば、次の建玉からはあなたの方へ利益金となつて返つて行くから。」と延々と四〇分以上も電話で説得を受け、原告は、結局、売り九五枚の仕切と同時に買い一〇〇枚を建てることになつた。
4 昭和五八年八月二六日より取引の終了まで
原告は、被告乙山春夫の「このあたりが底値だから」という意見に従つて、八月二六日、一〇〇枚の買いを建て、更に九月六日には損害を回復するためとして四〇枚のナンピン買いをすることになつたが、その後の経過は見込み外れで、値段は下がり続け、九月二八日までに手数料を含め合計四三五〇万円余りの損失を被つた。
このころ、原告は、損が出るので、自分なりに相場の変動要因などを研究しようと思い立つて本を買い求めようとしたが、適当な本が見つからなかつた。
前述のように、被告乙山春夫が担当後は、毎日市況等の電話が入つており、このころから、原告は指値注文をしたことがあるが、その値段では売買が成立せず、指値で仕切られた取引はなかつた。
九月に前記のような大きな損失を被りながら、原告は、被告乙山春夫から、「値上がりの情報もいろいろ入つているので今度こそ損金を取り戻すために買いを建てましよう。」と言われて、一〇月一九日に買い五〇枚を建てたが、これも一二月一六日までに手数料を含め合計三二一〇万円余りの損失で終わつた。
更に、昭和五九年二月七日、「相場にやつと底値感が出てきた。今買いを建てれば今度こそある程度取り戻せそうだ。ここは多少無理をしてでも有価証券なり何でもいいから資金を投入するチャンスだ。」と言われ、「もう余分の金はありません。ない袖は振れません。」と保証金のある分だけで建てたが、これも見込が外れ、二月一六日には両建てをせざるをえなくなり、結局この両建ては手数料を含め一〇〇〇万円以上の損失となつた。
その後は、保証金の残りで建てられる三枚程度の取引をしたが、結果的には損失の回復はできず、昭和六一年二月二八日に累計損失七九七一万八〇六五円で取引を終了した。
この間、昭和五九年一二月二八日、原告は、このころ金が必要になつたという理由で被告乙山春夫に解約の申し出をしたが、大和転換社債ファンド八〇〇口の返還を受けられたにとどまり、取引の継続をすることになつた。
また、昭和六〇年一二月二〇日ころには、「ブラジルのコーヒーが旱魃の影響で急騰している。砂糖は値動きが小さいがコーヒーは大きいので面白い。今までの損金も取り戻せそうだから是非乗つてほしい。」としつように取引を勧められロンドンコーヒーの値段表、日経新聞のブラジルコーヒー急騰の記事等購買意欲を煽るような資料がどつさりと入つた封筒が郵送されてきた。原告は金がないからと断つていたが、被告乙山春夫から「コーヒーが暴騰している。このチャンスに砂糖の損金をコーヒーで取り戻してほしい。保証金は砂糖の方はそのままにして新たに手持ちの有価証券でも現金でもいいから。」と言われて、結局は昭和六一年一月七日、買いを入れるに至つた。もつとも、コーヒーは翌日から暴落の一途であつた。この件は、契約書を入れない内のことであるとして、全く白紙にするということで決着した。
昭和六一年一月二〇日ころ、原告は、名古屋先物取引被害研究会に相談し、三月一〇日、電話で解約の申し出をした。被告乙山春夫がなぜ解約するのかいろいろ理由を聞くので「これ以上継続すれば丸裸になることは目に見えているし、息子のことで僅かに残つたお金も大切だから。」と言うと、「今止めては損が大きすぎる。僕の気持ちとしては一〇〇〇万円くらいは取り戻してからにしてほしい。」等と延々と説得された。
三月一九日、被告乙山春夫と被告南川から喫茶店で残金一三〇万円と株券六銘柄を受け取つた。被告乙山春夫は「本当に大きな損を出して申し訳ない。個人的にも信用してもらつていたので、頑張つたつもりだが。そこでこういうことはだれにもしないことだが、これから年末まで毎月四〇万円ないし五〇万円をあなたの口座に振込みたい。損金の大きさに比べて焼け石に水であるがそうさせてもらう。」と言つていた。しかし、その後一円の金も振込まれたことはない。
以上の事実が認められる。
右事実によれば、
1 本件取引の開始から昭和五八年八月二六日までの取引に関しては、前述のとおり、原告が真に自由な意思で取引をしたというには、問題が多い。
2 しかしながら、昭和五八年八月二六日には、当時の全建て玉を仕切つて取引を終了すれば、それまで支払つた手数料を含めても累計でも益金勘定になる状態となつた。
原告は、それまで一年近く取引を行つてきており、その間一回の取引で一七〇〇万円とか二三〇〇万円、最高二七〇〇万円もの差損金が出たこともあつたのであるから、商品取引の仕組みはもちろん、その投機性や危険性については十分に理解するに至つていたと思われる。
実際、原告は取引を終了させる気持ちになつており、その旨を被告乙山春夫に告げているのである。
そのような原告が、それまでの損失がなくなつたにもかかわらず、昭和五八年八月二六日に新たに買い建てしたのは、原告が投機による更なる利益を目論んでなしたものというほかはない。
被告乙山春夫の勧誘がしつこかつたとしても、電話での話にすぎず、原告が取引の終了をすることができなかつたということはできない。被告乙山春夫の真意は別として、同被告の行為それ自体が不当な仕切拒否とはいえないのはいうまでもない。
現に、その後は、原告自身も相場の研究をしようと思い、指し値をしたりしているのであつて、その能力の程度は低いとしても、自らの判断で取引をしようとしているのである。
以上のことからすると、昭和五八年八月二六日に新たに一〇〇枚を建てた以後の取引とそれ以前の取引との間に連続性を認めることができない。
よつて、昭和五八年八月二六日までの行為については、同日までの結果に即して、その不法行為性を判断することになるが、昭和五八年八月二六日までの取引は、同日の既存の全建て玉の仕切の結果、累計でも差益金が出ているのであつて、損失は生じていないから、この一事をもつて、詐欺的商法であるとはいえないことが明らかである。取引の勧誘方法や取引の内容をこれ以上云々する必要は認められない。
よつて、右取引期間についてのみ関与した被告田村、同宮地、同薮内には責任はなく、同被告らに対する本訴請求は理由がない。
3 そこで、昭和五八年八月二六日に新たに建てた一〇〇枚以降の取引について、不法行為であるか否かについて判断する。
前記認定のとおり、その後の取引はことごとく逆の方向になり、原告にとつて大きな損の結果に終わつている。
《証拠略》によれば、ユニオン貿易においては客の注文に対し売りと買いの差相当分について自社玉を建てていたというのであるから、手数料のみならず、原告の差損の大部分がユニオン貿易の利益に帰していることは想像するに難くない。
しかしながら、冒頭に述べたように、客がその判断に従つてなした取引であれば、その結果受託会社が利益を得たとしても、これをもつて直ちに詐欺的商法とはいえず、受託会社が客を操縦して取引をさせたことが認められなければならない。
そこで、本件取引の経過に即して、原告が被告乙山春夫によつて操縦されたか否かについて判断するに、なるほど、原告は、一年近く取引を経験したとはいえ、相場の変動要因について自ら資料を収集することも困難であつたと思われ、提供された情報を分析検討する能力も不十分であつたと思われる。
しかしながら、前記認定によれば、毎日被告乙山春夫と連絡をとつていたにもかかわらず、原告がなした取引回数は多いものではなく、被告乙山春夫の勧めに常に従つていたわけではないと認められ、原告は、被告乙山春夫の情報と意見をもとにして、みずからの判断によつて、取引をしていたものといわざるをえない。
また、取引番号11、12は両建であるが、両建てそれ自体は取引に際して用いられる一手段であつて、いかなる場合にも許されないものであるとはいえず、原告はそれ以前に経験しているから、その意味を理解してこれをなしたものと思料され、これをもつて「客殺し」の違法な手段がとられたということはできない。
なお、原告は取引の最終段階においても、限月の一月前が納会であると思つていたと主張するが、納会前は値動きが激しく、一般の投資家はこれを避けて、それ以前に手仕舞うことが多いのであつて、原告がそのような誤解をしていたとしても、このこと自体は余り重要視すべきことではない。
結局、昭和五八年八月二六日以降において、被告乙山春夫が原告について「客殺し」をするために、違法な手段を弄したと断定することができる事実については、原告も的確にこれを主張できないし、これを認めるに足りる証拠がない。
以上によれば、昭和五八年八月二六日以降の行為が、組織的に仕組まれた詐欺的商行為であると認めることはできず、また、受託会社の営業担当者としてなすべきでない違法行為があつたとも認めることはできないから、原告の被告乙山両名、南川に対する本訴請求も理由がない。
第五 以上のとおり、原告の被告らに対する本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないから、これを棄却する。
(裁判官 野田武明)
《当事者》
原 告 甲野花子
右訴訟代理人弁護士 岩本雅郎 同 浅井岩根
被 告 乙山春夫 <ほか三名>
右訴訟代理人弁護士 辻巻 真 同 辻巻淑子
被 告 薮内正彦 <ほか一名>
右二名訴訟代理人弁護士 梅沢和夫